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戻ることはできない

 昨夜、会社で飲み会があって、帰ってきた早々ベッドに倒れこんだせいか、今朝は3時という中途半端な時間に目が覚めた。
 カーテンの隙間から見える窓の外はまだ暗くて、向かいのマンションの灯りがぼんやりと見えるだけ。喉が渇いたので、隣に寝ている夫を起こさないようキッチンに向かった。
 はと麦茶を飲み干して、流しでグラスをすすぐ。生ぬるい水の感触に、ああもうすっかり夏だなと思う。
 もう6月。今日でまる1年が経ったんだ。

 先週末の土曜日に、法要のため奈良に行った。久しぶりに着る黒いワンピースは、湿気を含んで皮膚にまとわりついた。電車に乗っている間、幾度か小さいため息をついた。重苦しい気持ちを少しでも外に吐き出すために。
 だだっ広い平城旧跡の真ん中を進む電車から見える景色を、高校生の私はとても愛していた。どこまでも広がる緑の芝を眺めていると、不思議と心が安らいでくるのだった。
 けれどその日、芝はただ曇り空に覆われて佇んでいるだけで、私に安らぎはくれなかった。

 駅について、家までの道を進む。学校帰りに何時間も立ち話をした噴水、じゃんけんをしておごりあったクレープ屋、社会人になってから吐くまで呑んだ居酒屋。このあたりには、記憶を呼び起こす風景が多すぎる。次々と浮かぶ思い出がのしかかり、だんだん足が重くなる。同じような家々が並ぶ住宅街は迷路のようで、これまで何十回と訪れたはずなのに、私はまた道に迷った。開始時間が近づくにつれ、焦りとはうらはらに、歩みは、狭く、遅くなった。


 あれから、1年経った。 
 けれど、いったいそれがなんだというのだろう。私の胸の中には、1日も途切れることなく、彼女がいて、あるときは幸福そうに笑っているし、あるときは泣き、あるときは私を詰る。
 これからも、ただそれが続いていくだけだ。1年経ってわかったのは、そのことだけだと実感する。
 もう涙はほとんど出ない。毎日は、いたって平和だ。彼女がいたときと同じように。
 けれど、私はすっかり変わってしまったのだと思う。 どうしたって、1年前に戻ることはできないのだから。


 

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コメント

一周忌の法事に参列したんだね。
大変だったでしょう。お疲れさまでした。
できることなら、その場まで一緒に行ってあげたかったけど、
そんなことできるはずがないよね。
それに、いつも隣で寝ている人からも、きっと同じ申し出があったはずで、
でも、それを断って、ひとりで出掛けたのだろうと推察しています。

一周忌は別名『小祥忌』ともいうそうだね。
大事な人が亡くなって一年。また同じ季節が巡ってくるので、
喪失感が一段と強くなるのだと、作家で僧侶の玄侑宗久氏がいってました。

amiちゃんは、奈良出身だったんだね。
オレは学生時代、高野山にある写真館の長女と付き合っていました。
今でも彼女と結婚していたらどうだっただろうと思うことがあります。
仏教の街でカメラを手に生きるのも、悪くない人生だっただろうね。

あれから一年が経ったんだね。
つい昨日のような気もするし、遠い昔のような気もするよ。
その間、オレはこうして鳴かず飛ばずで、また一段と冴えないオッサンになった。
でもね、amiちゃんは、もっともっときれいになって、たくさん恋をしてくださいね。
えっ? 結婚してるからって? ハハハ、そんなことは関係ないよ。
オレなんて空堀にいる間中、amiちゃんのことを考えていたよ。
まあ、色々あるけど元気だしなよ。サヨナラだけが人生でもないさ。

Dさま、コメントありがとうございますshine

時間が流れるのはほんとに早くって、あっという間に1年が経ってしまいました。知らぬ間にどんどん年を取っていくのが嫌な感じですw
ご推察の通り、法要には1人で行きました。
私の地元奈良は、大阪の難波から電車で40分と、時間的距離は近いのですが、空気感はやはりまったく違います。鹿やお寺が当たり前にわんさか存在する以外はなんにもない、退屈で平和な土地です。
学生時代は買い物したり遊んだりする場所がないことが不満で、せっせと大阪に繰り出していたものですが、いまたまに帰ると、そのなにもなさにほっとしたりも。
せまい街ですから、どこにいっても思い出がみっちりぎっちりつまっています。そしてそれは、ずっとくっつきあうように過ごしていた友人たちと密接につながっています。法要の日は、その中を1人でぐるぐる歩きました。1年前と同じ、今にも雨が降りだしそうな曇り空でした。

高野山には行ったことがないんですよねー。そんなに遠くないはずなのに。でもなにやら神秘的なイメージがあります。そんな中で育った彼女さんはどんな方だったんでしょうかね、想像がふくらみます(。・w・。 )

そういえば、Dさんが大阪に来られてからももう4週間経ったんですね。
空堀の夜、満喫されたみたいで嬉しく思っていました。また次の機会には、大阪のディープな場所にアテンドさせてください!

ご活躍、いつも遠くから拝見しています。(もちろん作品も読ませていただきながら)
これからも、ブログで、書籍で、Dさまの文章をたくさん読ませてくださいね!
私も、おいしいお酒を飲んだり、愚痴ったり、恋をしたり(?)しつつ、なるだけ楽しく生きることにしますapple

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