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2012年6月

戻ることはできない

 昨夜、会社で飲み会があって、帰ってきた早々ベッドに倒れこんだせいか、今朝は3時という中途半端な時間に目が覚めた。
 カーテンの隙間から見える窓の外はまだ暗くて、向かいのマンションの灯りがぼんやりと見えるだけ。喉が渇いたので、隣に寝ている夫を起こさないようキッチンに向かった。
 はと麦茶を飲み干して、流しでグラスをすすぐ。生ぬるい水の感触に、ああもうすっかり夏だなと思う。
 もう6月。今日でまる1年が経ったんだ。

 先週末の土曜日に、法要のため奈良に行った。久しぶりに着る黒いワンピースは、湿気を含んで皮膚にまとわりついた。電車に乗っている間、幾度か小さいため息をついた。重苦しい気持ちを少しでも外に吐き出すために。
 だだっ広い平城旧跡の真ん中を進む電車から見える景色を、高校生の私はとても愛していた。どこまでも広がる緑の芝を眺めていると、不思議と心が安らいでくるのだった。
 けれどその日、芝はただ曇り空に覆われて佇んでいるだけで、私に安らぎはくれなかった。

 駅について、家までの道を進む。学校帰りに何時間も立ち話をした噴水、じゃんけんをしておごりあったクレープ屋、社会人になってから吐くまで呑んだ居酒屋。このあたりには、記憶を呼び起こす風景が多すぎる。次々と浮かぶ思い出がのしかかり、だんだん足が重くなる。同じような家々が並ぶ住宅街は迷路のようで、これまで何十回と訪れたはずなのに、私はまた道に迷った。開始時間が近づくにつれ、焦りとはうらはらに、歩みは、狭く、遅くなった。


 あれから、1年経った。 
 けれど、いったいそれがなんだというのだろう。私の胸の中には、1日も途切れることなく、彼女がいて、あるときは幸福そうに笑っているし、あるときは泣き、あるときは私を詰る。
 これからも、ただそれが続いていくだけだ。1年経ってわかったのは、そのことだけだと実感する。
 もう涙はほとんど出ない。毎日は、いたって平和だ。彼女がいたときと同じように。
 けれど、私はすっかり変わってしまったのだと思う。 どうしたって、1年前に戻ることはできないのだから。


 

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