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2010年7月

無力な祈り

 朝から気が塞いでいる。

 原因はわかっている。出勤前に見たニュースがきっかけで、普段心の奥に埋もれている感情が湧き出でてしまったのだ。
 かさぶたはとうに乾いていたから油断していた。薄皮の内には、いまだじゅくじゅくと爛れた膿が残っていることを思い知る。

 考えてみれば、あれからもうすぐ一年が経つ。
 まだ、一年なのか。もう、一年なのか。
 抱える人によって感覚は違うのだろう。私には、自分がどちらに近いのかよくわからない。

 彼女の断片は思わぬところに散らばっていて、それを見つける度、私は一瞬呼吸を忘れる。
 不思議なことに、どの欠片もきらきらと光を放ちながら、視界をかすめてゆくのだ。その光に目をこらすと、すぐさま脳が彼女の笑顔をかたちづくる。それはもう鮮明に。鮮明すぎて、輝きすぎて、とてもつらい。

 ああ、もういないんだな。
 この一年弱で、しばしばそう実感した。
 その時の私の感情を表わすとしたら「不安」というのがたぶん近い。悲しみでも諦めでもない、心許なさ。
 「在った」ものがない。「在るはず」のものがない。そして、それは二度と戻ってはこない。
 この事実は確固たるもののはずなのに、私自身はまったくもって不確定だ。まるで、どこにも手が触れない縦穴の中をふらふら漂っているような気持ち。
 どうしよう、どうしようと、辺りを見渡しながら、上がることも下がることもできずに浮いている。
 もう、どうすることもできないのにね。

 私は、彼女を失くした。それなのに、私の中に彼女は確かに存在している。ともすれば、一年前よりも大きな感触で。
 そしてこれからも、街のあちこちで、記憶のあちこちで、私の心をひっかくんだろう。
 後悔とやるせなさとさみしさと懐かしさと憂鬱さをつれてくるんだろう。ぜんぶが入り混じった、とらえどころのない感情を喚ぶんだろう。

 ひとつだけ実感をもって言えるのは、「もう嫌だ」ということだ。こんな思いは、これ以上ごめんです。
 私の大事な人たちを、こんな形で抱えてゆくことはしたくないのです。

 じゃあ私にはなにができるのか? できないのか? 
 しかし、こう考え出すと、またもや答えがわからなくなる。

 私にできるのは、きっと祈ることだけ。
 どうか間に合いますように。どうか手に届かぬところに行ってしまいませんように。
 
 なんて無力なんだ。 

 
 

こわいはなし

 ご無沙汰もいいとこですね。すいません。
 とんでもなく暑い日が続いていますが、皆さんお変わりないでしょうか。
 
 先週末、ようやく新居にPCとテレビがやってまいりました。普段からテレビはほとんど見ないからなくってもいいや、なんて思っていたけれど、ひとり暮らしには必需品であることに気づきました。だって、無音なんだもん。私がなにかを発さないかぎり、音らしい音がない。聞こえるのは、エレベーターのぎゅいいいんという昇降音と、側の道を走る車の音だけ。
 さ、さみしい……。あんまりさみしくて、ひとり鼻歌なんぞをうたってみたのですが、余計に静寂が強調されただけなのでした。
 そんなこんなで、私は相変わらず元気に過ごしております。

 そういえば、私の住むマンションは、入居した901号室以外はすべてテナントとして企業が入っており、純粋な住人は私だけなのです。だから、夜の間はビル中に私ひとり。友達と馬鹿騒ぎするにはもってこい、と住みだした当初はウハウハ喜んでたのですが、いまとなると少し後悔しています。
 先ほど、エレベーターの昇降音が聞こえると書きましたでしょ? そう、聞こえるのです。夜の間中、ずっと……。
 普通、エレベーターは誰かがボタンを押してはじめて、上がるなり下がるなりをスタートさせるはずです。だのに、誰もいないはずのビルで、エレベーターの昇降音がなり続けるのです。ぎゅいいいいん、ぎゅいいいいん、と……。
 ちょっとした怪談みたいではありませんか。いつか書いた気もしますが、私、とんでもなく怖がりなんです。自分なりに、その理由を分析してみると、たぶん私が妄想体質だからではないかと思うのです。ちっぽけな事柄からどこまでも話を大きくする癖があるのです。
 今回も、ぎゅいいいんが始まると同時に、私の頭は勝手に働きはじめます。

 昔、このビルには女の子が監禁されていました。幼い子どもに性的欲求を持つ若い男の手によって。先ほども申しましたが、このビルは夜になると人っ子ひとりいなくなります。しんと静まり返るビルのなか、毎晩男にいたぶられる少女。彼女のか細い声は誰にも届きません。
 あるとき、ついに少女は男の手によって嬲り殺され、屋上にある貯水槽に小さな体を葬られました。
 その日から、毎夜エレベーターが昇降を繰り返すようになったのです。どうにか屋上から外に出ようと、震える指で一階のボタンを押す少女。けれど、この地に縛りつけた体は玄関から出ることがどうしてもできません。望みを断ち切られた彼女は、仕方なくまた屋上へ戻るのです。
 一度は、屋上に舞い戻った少女。けれど、やはり諦めきれずに、また一階のボタンに指を伸ばします。
 そうして夜の間中、エレベーターは上がったり下がったりを繰り返すのです。泣きながらうずくまる少女を乗せて……。

 みたいな! みたいな! 布団にもぐりこんだ私の頭の中には、少女の肌の質感まで再現されるのです。死ぬほど怖い。テレビがくるまでは、お酒をかっくらって睡魔を引っ張ってこないと眠ることもできませんでした……。
 でもいま文章にしてみると、なんてひねりのない話なんだw 自分の想像力のなさに苦笑します。でも、こういうのってベタな話のほうが怖かったりしませんか? 小さい頃に聞いた怪談が身に染みこませた恐怖感というか……。

 で、結局夜中のエレベーターの謎はいまだ解けないままなんですが、テレビがきてからはなんだかどうでもよくなりました。わざわざ管理人さんに確かめるのも馬鹿らしいし。
 恐怖心にもかるがる打ち勝つ、ものぐさ気質よ。
 めでたしめでたし。
 
 てなところなんでしょうが。でもね、テレビがきたことでまた新たな妄想が始まってしまったのですよ……。

 夜中ふと物音を感じて目を覚ました私は、消したはずのテレビがついていることに気づく。画面には髪の長いおんなが後ろ向きに立っている。おんながゆっくり首を回して振り返る。そこで私は、テレビの電源がOFFになってることに気づく……。

 みたいな! みたいな!
 はい、いい加減にしろ、ですね。自分で自分の首をしめて私はどうしたいんでしょうか。

 誰か私と一緒に暮らしてください。限界です。(20%くらい本気)

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