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なんだかなあ。しかたないなあ。

 今朝、出がけに母とつまらない喧嘩をした。

 私が最近連絡をせず家を空けることをなじられ、つい反論してしまったのだ。
 私と母にとって、こんなことは日常茶飯事だ。あらゆることで感覚が合わないので、いつもすれ違いが生じ、それが小さないさかいに発展する。
 母はいつまでたっても、娘や息子に干渉することをやめない。今日のように「もういい大人なんだから放っておいて」などと言おうものなら、「あんたは冷たい」だの「どうせ私は誰にも必要とされない」だのと、いつまでも恨み言を繰り返される。正直に言って、非常に面倒くさい。しかも、ただ面倒くさいだけでなく、そこには罪悪感も伴うからやっかいなのだ。
 私だって、別に仲違いをしたいわけではない。お互いの感覚が合わないのを理解し、受け入れたうえで、穏やかな関係を築ければとつねに願っている。
 だが母に言わせると、それは「冷たい」ということになる。「私をないがしろにしてる」ということになる。そうではないのだと、私が言葉を重ねれば重ねるほど、しかし母は耳をふさぎ、自ら作る思念の殻に閉じこもってしまうのだ。
 自分の言葉がまったく届かないことがもどかしくて、私はつい声を荒げる。ときにひどい言葉も投げつける。そしてまた母に泣かれたりする。
 なんて大人気なくて、不毛なやりとりなんだろうと、腹立たしくて、情けない気持ちになる。
 そして、むしゃくしゃして捨て台詞を吐いたそのあとは、きまって自己嫌悪におちいる。そんな気持ちにさせた母がうとましく、また、そんな母を受け入れられない自分の至らなさを憎むのだ。

****

 もちろん、昔から母との間に軋轢があったわけではない。どちらかと言えば、いつも母のあとをついてまわる「ママっ子」だった。
 幼い頃、母の寝物語をとても楽しみにしていたのを覚えている。彼女には物語をつむぐ才能があると思う。私や妹、その友人達を登場人物にしたお話をいくつも創って、私たちに聞かせてくれた。ストーリーは、大きな敵に立ち向かう冒険ファンタジーであったり、胸ときめく学園ロマンスであったりした。毎夜少しずつ語られる「お話」を、私たち姉妹は心待ちにしたものだった。
 二十歳をずいぶん越えたいまだって、世間から見れば、私たちは仲の良い親子にカテゴライズされるのだろう。一緒に買い物や映画に出向いたり、何時間もカラオケで歌ったりする。服の趣味も好む映画も歌う曲もまったくかみ合わないから、最後はきまって喧嘩になるのだけれど。

 きっと彼女は、いつまでも子離れができない未熟な母親なのだろう。くわえて、一時期境界性人格障害を疑ったほど不安定な性質を持っている人間だ。
 そして私は、その母を気の毒に思ったり冷静に許容しようとしつつも、最後には感情をぶつけてしまう、そう、結局はただの甘ったれたガキなのだ。

 もし家族でなかったら、とふと考えることがある。
 もし家族でなかったならば、きっと関わりすら持ちたくなかっただろうとも思うし、もしかしたら適度な距離感をもってうまく付き合っていけたかもしれない、とも思う。
 しかし、私たちが血を分けた親子だということは、もうどうしたって変えられない。その確固たる事実を、いまだうまく対処できない自分がいる。

**** 

 今日、仕事からの帰り道、駅前にちょっとした人だかりができていた。エプロンをつけた若い女性が「カーネーションがお買い得ですよ」と声を上げている。そうか、今週末は母の日だ。仕事柄、コンテンツをUPしたらそのイベントが終わったことになるので、日付の感覚が狂っていた。
 吸い寄せられるように店の前に立ち、いろとりどりの花を眺めているうちに、思わず私は財布を取り出していた。

「特殊なジェルを使っているので、一週間はもちますよ」

 店員さんににこやかに話しかけられて、少し迷ったあと、一番価格の低いちいさな花束を買った。自分でもよくわからない心持のまま、千円札を出した。
 私は、母を喜ばせたいのかな。それとも、今日のいさかいで感じた罪の意識を紛らわせたいのかな。
 少なくとも、母になにかをしたいという気持ちはあるようだ。いちばん安価な花束程度なのかもしれないけれど。

 家に帰って、「これ。母の日だから」と花束を差し出すと、母は「ふーん、ありがと。可愛いね」と、たいして嬉しくもなさそうに受け取った。そのそっけなさに、瞬間買ったことを後悔して、もっと嬉しそうにしろよとイラっとした。けれど、そのあと、なぜだか笑いがこみあげた。あーそうね、あなたはいつもそんな感じですよね。

 私たちは、これからもこうして続いていくのだろう。親子でいるかぎりずっと。(……そして、それは生きている限りずっと、ということだ。)

 

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