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朝、マクドナルドで。

 朝、めずらしく時間があったので、マクドナルドでコーヒーを飲んだ。
 まだ7時過ぎだというのに、店内は人で溢れかえっていた。かろうじて空いていた隅のテーブルに席を取り、pomeraの電源を入れる。
 右隣では出勤前のサラリーマンが日経新聞を読み、左隣ではオール明けらしい学生の一群が物憂げに会話をしている。
 大きなバッグをひざに抱え、眠たげな目であたりを見渡す私は、周囲からどのように見られているのだろう。
 ふとそんなことを思ったけれど、きっと私の姿なんて誰の目にも映ってはいないのだと、自分自身で答えを見つけた。置き忘れられたビニール傘や紙くずであふれるゴミ箱に、誰も注意を払わないのと同じように。私だけじゃない。ここにいる人々は皆そうだ。互いが互いにとっての風景として存在する空間。
 油くさい空気ととめどないざわめきの中で、誰かの風景となった私は薄いコーヒーをすする。心許なさと奇妙な開放感を抱えながら。
 
 いつのまにか、前の席にひとりの老婆が腰掛けていた。
 体中まんべんなく埃をかぶったようなくすんだ色合いの服装をし、足元には大きな紙袋が二つ。髪は薄く地肌が見え、歯は残っている本数の方が少なそうだ。少々みすぼらしいというほかは、特に不審でもない彼女の様子になぜか目が留まった。暇に飽かし、ぼんやりと眺めることにする。
 老婆が、大きな口を開けてバーガーにかぶりつく。口元に豪快にパンくずをつけたまま一心不乱にかぶりつく。貧相なバーガーは、歯のないせいで暗い空洞に見える口の中に吸い込まれ、ものの数分で包み紙だけになった。バーガーを片付けたあとは、ポテトに手をつけ、こちらもすさまじい速さで咀嚼していく。枯れた容貌にそぐわない勢いに圧倒され、私は彼女から目を離せなかった。
 あっというまに食物がなくなったトレイの上に、老婆は週刊誌を広げた。足元の大きな紙袋をごそごそと漁って取り出したものだ。物を咀嚼したのと同じような力強さで、一枚一枚ページを繰ってゆく。
 ふと、あるページで彼女の手が止まった。ぎょろりとした目でじっと誌面を睨め付けている。まるでそこから宝のありかを見つけてやろうとでもいうような執拗さを感じる。

(なにをそんなに真剣に見ているんだろう。)

 興味を覚えた私は、伸びをするふりをして、彼女の手元を覗き込んだ。そして、そのまま固まってしまった。

 老婆が見ていたのは、ヌードグラビアだった。若いおんなが惜しげもなく乳を放り出している姿が見開きいっぱいに広がっていた。

(老婆がヌード、老婆がヌード、老婆がヌード、老婆がヌード……)

 うまくリンクしない二つの単語が頭のなかにこだまする。あっけにとられたまま伸ばした手をのろのろと下げる。無意識にすすったコーヒーは味がしなかった。
 そんな私にまったく気をとめず、老婆は見終えた週刊誌を紙袋に戻し、席を立った。大きな荷物をかけた両手に器用にトレイを載せ、悠然と出口に向かう。口元には最後までパンくずが貼り付いたままだった。

 朝一からファーストフードとおんなの裸を体内に取り込む老婆。それもものすごい勢いで。不思議なものに遇ってしまった。
 彼女はただの風景ではなかった。少なくとも私にとっては。そして、私はやっぱり単なる風景でしかなかった。きっと誰にとっても。

 自分でも理由のわからない溜息をついて、私はマクドナルドをあとにした。

***
 pomeraの使いごこちは良好です。キーボードも打ちやすいし、起動も早い。なにより白と黒のコントラストが、私の愛するパンダのようでなんともかわいらしい。名前は暫定的に「ポメ太」にしました。愛称は「ポメたん」です。

***
 ひさびさにNHKラジオのぷちぷちケータイ短歌に投稿してみた。
 テーマ「焦」
 歌人・加藤治郎さんに選んでいただけたようです。
http://www.nhk.or.jp/shibuz-blog/100/40691.html

***
 そういや今日は弟の誕生日だ。君が何歳になったかまったく思い出せない薄情なお姉ちゃんを許してね。あと、プレゼントも忘れてたふりをしますが悪しからず。

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